人工島環境アセスレビュー報告書への疑問
 

2001年8月 田中浩朗まとめ
以下の文書は、福岡市等が2001年4月に発表した「アイランドシティ整備事業環境影響評価レビュー報告書」に対する和白干潟を守る会メンバーによる疑問をまとめたものです。所々に挿入された☆印以下の文章が疑問です。p4-序-6などは、報告書のページを表します。「 」でくくった部分は報告書からの引用です。( )内の注はほとんど原文にあったものですが、こちらで入れた注もあります。私たちの疑問の内容をわかりやすくするため、報告書からの引用をたくさんいれてあります。

まだ疑問をまとめる作業をしている最中ですが、きちんとまとまったら福岡市港湾局に聞きに行くつもりです。


●評価の基準

○環境保全目標(p4-序-6〜7)

・ 数値目標のあるものについては「環境基準(福岡市の環境目標)の達成と維持に支障を及ぼさないこと」
・ 数値目標のないものについては「自然環境の保全上支障を生じないこと」
   底質・・・「底生生物及び砂浜・干潟生物(海生動物の一部)の生息状況に大きな変化を及ぼさないこと」
   生態系・・・「海生動物及び陸生動物の生息状況に大きな変化を及ぼさないこと」
    これらの項目は「「海生動物」及び「陸生動物」を評価することで代表する」

☆「自然環境の保全上支障を生じない」とはどういうことか。
 「大きな変化」とはどの程度の変化のことか。
 「大きな変化」ではない(比較的小さな)変化が生じても、「保全上支障を生じない」、つまり環境保全目標が達成されるということか。しかし、環境の保全とは、現在の環境をそのまま保つこと、環境悪化を生じさせないことではないのか。
 特に和白干潟が博多湾に残された数少ない貴重な自然である(博多湾の干潟はほとんど埋め立てにより消滅している)ことを考えるならば、少しくらい悪化してもよいという考えは認められず、できるだけ現状を維持し、さらには改善するよう努力すべきなのではないか。

○貴重種等の環境保全目標(p4-序-8の表4-序-3)

 貴重性ランクA〜Cに応じて、環境保全目標が定められている。
 たとえば、クロツラヘラサギは貴重性ランクAで「環境要素への影響を努めて保全する(厳正保護)」となっている。カンムリカイツブリは貴重性ランクBで「環境要素への影響を相当程度保全する(適正保全)」となっている。ミヤコドリは貴重性ランクCで「環境要素への影響を努めて最小化する(維持努力)」となっている。

☆「努めて保全する」「相当程度保全する」「努めて最小化する」とはどういうことか。

○予測、評価の表記について(p4-序-9)

「ない」・・・影響が考えられないもの
「ほとんどない」・・・影響が考えられるものの、その程度は季節変動など自然の変動の範囲より小さいと考えられるもの(5〜10%程度)
「小さい」・・・影響が考えられ、その程度は季節変動など自然の変動の範囲と同程度ないしやや大きいと考えられるもの(20%程度)
「比較的小さい」・・・影響が考えられ、その程度は自然変動の範囲より大きいと考えられるが、予測対象の保全に支障を生じるものではないもの(30%+程度)
「大きい」・・・変化、影響が明らかに大きく、予測対象の保全に支障を生じると考えられるもの
 なお、( )内の数字は田村委員(日本野鳥の会福岡支部事務局長)がレビュー検討委員会で確認したもの。

☆目安となる数値(パーセント)は正しいか。各表記の定義、目安となる数値は全国共通のものか。統一した基準があるのか。我々の日本語の感覚ではかなり違和感があるが。
 変化が「大きい」という場合、目安として何%以上の変化がある場合か。
 「ほとんどない」「小さい」「比較的小さい」といった表現は「季節変動など自然の変動の範囲」が基準になっているが、影響評価する際、自然変動の範囲をどのように決めたのか。そのための調査はどの程度したのか。影響評価をする際、自然変動の範囲を明示すべきではないか。(そうでないと、各表現が妥当かどうか判断できない。)

●潮流

 p2-1-5「和白海域の測点1では、当初アセス時には、湾奥方向の流れが卓越していたが、平成9年度にははっきりした流向がみられなくなっている」(p2-1-8の図2-1-7参照)。

☆このことは、和白海域の海水が工事前に比べてよどんでいることを示しているのではないか。それが水質の悪化の原因になっているのではないか?

●水質

 p2-1-16〜17の博多湾の水質調査地点に和白海域が入っていない。しかし、事後調査結果p3-2-1〜13では和白海域に調査地点H-1、M-5、M-6が入っている。

☆地域の概況(p2-1-16〜17)で和白海域の水質調査地点が入っていないのはなぜか。平成5年より前には測定していないためか。人工島内に調査地点E-5があったはずだが。

 p4-2-31「水質予測結果によると、アイランドシティ竣功時のCOD濃度の75%値は、東部海域の環境基準点で、2.9mg/Lと予測され、環境基準(3mg/L以下)を満足すると考えられる。
 したがって、環境保全目標を満足すると考えられる」。

☆同頁の図4-2-26によると、和白海域のCOD75%値の予測結果は3.6mg/Lを超えている。これで和白海域の環境は保全されるのか。

●悪臭

 p3-1-18「臭気指数については、地点によっては福岡市の指導基準(臭気指数10)を上回っていたが、これは調査当日の風向、臭気の種類から自然的要因によると考えられる。また、アイランドシティ整備事業の工事に伴う悪臭の苦情はない。したがって、工事に伴う臭気による生活環境への影響はなかったと考えられる」。
 p3-1-19の表3-1-15によると、基準を越えているのは、平成10年9月1日のA-2(和白)臭気指数14(磯臭)、同日A-4(御島)臭気指数13(磯臭)、平成10年10月13日のA-1(奈多)臭気指数15(判別できず)、同日A-2(和白)臭気指数10(磯臭)。

☆「磯臭」とはどのような臭いか。アオサの悪臭も含まれるのか。
 p3-序-1(事後調査対象項目)から分かるように、臭気に関する調査は、工事から直接発生する臭気に限定されている。しかし、和白干潟周辺ではアオサの悪臭がかなりひどいことがある。アオサの悪臭も調査対象にすべきではないか。アオサの悪臭についてはどのように評価しているのか。
 埋立工事区域周辺の臭気調査は9月1日〜11月24日に行なわれているが、一年を通して調査すべきではないか。

●海域底質

○粒度組成

 p3-2-15「和白海域のT-1では、平成9年度以降、粘土・シルト分の割合の増加がみられ」る。「T-1については、変化が生じた時期に護岸工事等が始まっていることから、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-33「和白海域及び御島海域では、今後も静穏状態が続くため粘土・シルト分が高くなると考えられるが、竣功後の粘土・シルト分の増加速度は、事後調査でみられたものより小さくなると予測される。
 なお、和白海域では平成9年度以降、冬季に粘土・シルト分が高くなる傾向がみられているが、この要因は不明であり、今後の動向をみていくこととする。
 また、御島海域においては一部で覆砂による底質改善により当面、粘土・シルト分の少ない状態で推移すると予測される」。

○化学的酸素要求量(CODsed)

 p3-2-17「和白海域のT-1では平成9年度以降、御島海域のT-2では平成7年度以降、・・・CODsedの増加がみられる」。「T-1、2については、変化が生じた時期に近傍で護岸工事等が始まっていること・・・から、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-34「和白海域及び御島海域では、今後も静穏状態が続くためCODsedが増加すると考えられるが、CODsedの増加速度については、将来の水質が改善されるため事後調査でみられたものよりも小さくなると考えられる。
 なお、和白海域では平成9年度以降、冬季にCODsedが高くなる傾向がみられているが、この要因は不明であり、今後の動向をみていくこととする。
 また、御島海域においては水深1m以深の大部分で覆砂を行っており、当該地区では覆砂による底質改善により、CODsedが少なくなった後、当面、工事着工後のCODsedの変化傾向と同様の推移をすると予測される」。

☆秋から冬にかけてアオサが堆積・腐敗するが、それと冬季にCODsedが高くなることは関係がないか(以下の硫化物、強熱減量についても同様)。

○硫化物

 p3-2-19「和白海域のT-1では、平成9年度以降、硫化物の増加がみられる」。「T-1〜4については、変化が生じた時期に近傍で護岸工事等が始まっていることから、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-35「底泥中の有機物量は今後も増加すると予測される。
 このため、底泥中の有機物の分解に伴い、夏季の底泥直上の貧酸素化の状態は現在よりも進むと考えられるが、水質に寄与するのは底泥の表層部分であるため、底泥中の有機物が増加しても底泥直上の貧酸素化の進行速度は事後調査でみられたものより緩やかになると考えられる」。
 「和白海域及び御島海域では、今後も静穏状態が続くため硫化物濃度の増加は続くと考えられるが、硫化物濃度の増加速度については、貧酸素化の進行速度が弱まるため事後調査でみられたものより小さくなると考えられる。
 なお、和白海域では平成9年度以降、冬季にCODsedが高くなる傾向がみられており、これに伴い、硫化物量も夏季より冬季に高くなる変化がみられていることから、今後の動向をみていくこととする。
 また、御島海域においては、前述のとおり水深1m以深の大部分で覆砂を行っており、当該地区では覆砂による底質改善により、硫化物濃度が低くなった後、当面、工事着工後の硫化物濃度の変化傾向と同様の推移をすると予測される」。

○強熱減量(有機物量の指標)

 p3-2-21「和白海域のT-1では、平成9年度以降、強熱減量の増加がみられる」。「T-1については、変化が生じた時期に近傍で護岸工事等が始まっていることから、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-36「和白海域及び御島海域では、今後も静穏状態が続くため強熱減量は増加すると考えられるが、強熱減量の増加速度については、将来の水質が改善されるため事後調査でみられたものより小さくなると予測される。
 なお、和白海域では平成9年度以降、CODsedと同様に強熱減量についても冬季に高くなる傾向に変化していることから、今後の動向をみていくこととする
 また、御島海域においては一部で覆砂を行っており、当該地区では覆砂による底質改善により、強熱減量が小さくなった後、当面、工事着工後の強熱減量の変化傾向と同様の推移をすると予測される」。

●砂浜・干潟域底質

○化学的酸素要求量(CODsed)

 p3-2-26「和白干潟のH-6では高潮帯で、平成7年度に一時的に増加したのち減少し、その後平成8年度以降、増加がみられる。また、香住ヶ丘のH-11では低潮帯で平成9年度以降、増加がみられる」。「これらの変化は、変化が生じた時期が護岸工事等の着工後であることから、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-38「和白地区の一部及び御島地区の一部では、今後も静穏状態が続くためCODsedが増加すると考えられるが、CODsedの増加速度については、将来の水質が改善されるため事後調査でみられたものより小さくなると予測される。
 なお、和白地区の高潮帯については、水面より上になっている時間も長いことから、上で述べた静穏化以外の要因も考えられるため、今後の動向をみていくこととする。
 また、御島地区の北東側および南東側の中潮帯では養浜により、CODsedが低い状態になった後、当面、工事着工後のCODsedの変化傾向と同様の推移をすると予測される」。

☆「静穏化以外の要因」として、アオサ等の堆積・腐敗が考えられるのではないか。

○硫化物

 p3-2-28「和白干潟のH-6では高潮帯で、平成7年度に一時的に増加したのち減少し、その後平成8年度以降、増加がみられる。また、H-6の低潮帯では平成7年度以降、増加がみられる」。「これらの変化は、・・・変化が生じた時期が護岸工事等の着工後であることから、主な変化要因として事業が考えられる」。

 p4-2-3「和白地区の一部では、今後も静穏状態が続くため硫化物濃度の増加が続くと考えられるが、硫化物濃度の増加速度については、有機物の沈降量が減少するため事後調査でみられたものより小さくなると予測される。
 なお、和白地区の高潮帯については、水面より上になっている時間も長いことから、上で述べた静穏化以外の要因も考えられるため、今後の動向をみていくこととする。
 また、御島地区の北東側および南東側の中潮帯では養浜により、硫化物の濃度が低い状態になった後、当面、工事着工後の硫化物濃度の変化傾向と同様の推移をすると予測される」。

☆「静穏化以外の要因」として、アオサ等の堆積・腐敗が大きいのではないか。

●潮間帯付着植物(主にアナアオサ)

 p3-4-8「博多湾における潮間帯付着植物の種数、主な種の出現状況に変化はみられず、事業の影響はほとんどなかったと考えられる」。
 p3-4-10:当初アセスでは「工事中については、これらの植物は施行区域内を生息域としていないこと、また、濁りの拡散は工事区域近傍に限られることから、潮間帯付着植物の生息状況への影響はほとんどないものと予測・評価していた」。「埋立地の存在時については潮流の変化が埋立地近傍に限られること、埋立地では、自然石を用いた傾斜式護岸等の付着基盤が造成され、潮間帯付着植物が定着すると考えられることから、潮間帯付着植物の生息状況への影響はほとんどないものと予測・評価していた」。
 「事業の進捗に伴う潮間帯付着植物の生育状況への影響は、当初予測とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

☆アナアオサが大発生している和白干潟で調べていない(p3-4-8の図3-4-5を参照)。また、種数や主な種の出現状況のみを問題にしていて、その量的変化を問題にしていない。実際には和白海域でアナアオサが大発生しているが、それをどう評価するのか。
 博多湾におけるアオサ回収の時期、回数、回収量、処理方法、廃棄場所、回収費用などを教えてほしい。
 

 p4-4-2「潮間帯付着植物の生育状況の変化については、工事着工前と比較して、海域の消滅による付着基盤の消滅はなく、新たな付着基盤が出現し、また、水質の変化に伴う生育環境の変化は小さく、潮間帯付着植物の生育状況に大きな変化を与えないと考えられることから、埋立地の存在に伴う潮間帯付着植物の生育状況の変化はほとんどないと予測される」。
 「埋立地の存在に伴う潮間帯付着植物の生育状況の変化はほとんどないと予測されることから、影響はほとんどないと考えられる。したがって、環境保全目標を満足すると考えられる」。

☆これまでのアナアオサの異常発生について説明がなく、今後の予測もない。和白海域の水質は富栄養化しており、今後も続くと予測されている。アナアオサは付着基盤がなくても増殖する植物であり、そのため異常発生している。今後も異常発生が続くのではないか。
 アオサの対策はどうするのか。人工島埋立地にアオサを捨てていると聞くが、人工島ができあがり、捨て場がなくなったらどうするのか。

●底生生物(海域)

 p3-5-9:出現個体数は「和白海域から埋立地北西側のT-1、3〜5は経年的に増加して」いる。「T-1及びT-3〜5の個体数増加・・・は、二枚貝のホトトギスガイや多毛類のPrionospio pulchraの変化によるところが大きい。変化の原因については・・・T-1については海域の静穏化による有機懸濁物の沈降によると考えられ、T-3〜5については、底泥の有機物量が増加したことによると考えられる」。
 p3-5-10「地点別に種構成をみると、T-1では平成8年度及び10年度に、全個体数に占める有機汚濁に強い種(ヨツバネスピオ(A型)、Capitella capitata、シズクガイ、Prionospio pulchra)の個体数割合が増加しており、同様にT-3〜5では平成8年度〜10年度に、その全個体数に占める有機汚濁に強い種の個体数割合が高い」。「上記4種のうち、Prionospio pulchra以外の3種は、一般に貧酸素条件耐性が強いことが知られている」。Prionospio pulchraの貧酸素条件耐性については不明。
 p3-5-14:当初アセスでは「工事中については濁りの拡散が工事区域近傍に限られることから、底生生物の生息状況への影響は小さいものと予測・評価していた」。「埋立地の存在時については潮流の変化が埋立地周辺に限られること、水質・底質の変化がほとんどみられないことから、底生生物の生息状況への影響は小さいものと予測・評価していた」。
 「事業の進捗に伴う底生生物の生息状況への影響は、埋立地周辺に限られており、当初予測とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

 p3-6-6「個体数は、平成8年1月以降、植食者、内在性堆積物食者、表在性堆積物食者、懸濁物食者が増加している。全個体数は、経年的に増加している。構成比率は、植食者、内在性堆積物食者が増加し、肉食・堆積物食者が減少している」。「当該海域では、餌を有機懸濁物に依存している表在性堆積物食者や懸濁物食者が多い。平成8年1月以降、これらや餌を藻類に依存している植食者の個体数が増加していることから、餌環境が変化していたと考えられる」。
 p3-6-7「平成8年1月以降に植食者、表在性堆積物食者、内在性堆積物食者及び懸濁物食者が増加しているのは、本海域において底生生物の餌となる藻類や有機物量が増加したことを示している。
 水の濁り(SS)は、・・・平成8年5月以降に減少しており、これとともに透明度が増加している。このため、海底面において藻類が生育しやすい状況になったと考えられる。また、底泥中の有機物(CODsed)及び硫化物は、平成9年度以降に増加がみられ、これは粘土・シルト分の割合の増加とほぼ一致している。これらの変化要因は、当該海域の静穏化に伴い、海水中の懸濁物が堆積しやすくなったためと考えられる」。
 p3-6-8「和白海域の底生生物の生息場は、植食者、表在性堆積物食者、内在性堆積物食者及び懸濁物食者が増加しやすい餌環境への変化がみられ、海底面において藻類が生育しやすくなったと考えられる。また、底質(粘土・シルト分、CODsed、硫化物)の変化もみられる。
 この変化要因は、護岸の概成に伴う和白海域の静穏化により、有機懸濁物が堆積しやすくなり、透明度が増加したことが考えられる。
 このように、和白海域では事業の実施に伴い、ベントスの生息場機能に変化が生じ、個体数の増加が生じたと考えられるが、種数、湿重量、主な種の構成に影響を及ぼすほどの変化ではなかった」。

 p4-5-4:和白海域では「餌環境については底泥中の有機物量が増加すると予測され、生息環境については粘土・シルト分及び硫化物量が増加し、夏季における底泥直上の貧酸素化も進行すると予測される。
 この生息場機能の変化に伴い、今後、餌環境の変化から底泥の有機物を餌とする内在性堆積物食者の割合が増加し、生息環境の変化から有機汚濁に強い種や貧酸素条件耐性の強い種の割合が増加することが考えられ、主な種の構成が変化することも考えられる。
 しかし、事後調査では同様の生息場機能の変化が生じているが、個体数の増加がみられたのみであり、種数、湿重量、主な種の構成には大きな変化はみられていない。また、今後の有機物量や硫化物量の増加速度及び貧酸素化の進行速度は弱まると考えられること、和白海域と比較して有機物量及び硫化物量の多い他の海域でも種数、個体数、湿重量は和白海域と大きな差異がみられないことから、餌環境及び生息環境の変化は底生生物の生息状況に大きな変化を及ぼすものではないと予測される」。

☆「和白海域と比較して有機物量及び硫化物量の多い他の海域」とはどこで、どんなデータがあるのか。また、どのくらいの違いをもって「差異がみられない」と言っているのか。

●砂浜・干潟生物

 p3-5-16「東部海域の主な種については変化がみられたが、工事着工前の主な種と工事着工後の主な種は、いずれも富栄養な底質環境を好む種であり、生息環境の変化を示すものではないと考えられる」。p3-5-19の表3-5-6によると、東部海域の主な種は、事前調査ではナミノリソコエビ属・ホトトギスガイ・ニホンドロソコエビなど、平成10年夏〜11年春ではウミニナ・ホトトギスガイ・エドガワミズゴマツボなど、となっている。
 p3-5-20:当初アセスでは「工事中については濁りの拡散が工事区域近傍に限られることから、砂浜・干潟生物の生息状況への影響は小さいものと予測・評価していた」。「埋立地の存在時については潮流の変化が埋立地周辺に限られ、地形変化は小さいこと、水質・底質の変化がほとんどみられないことから、砂浜・干潟生物の生息状況への影響はほとんどないものと予測・評価していた」。
 「事業の進捗に伴う砂浜・干潟生物の生息状況への影響は、当初予測とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

☆たとえ富栄養な底質環境を好む種の中での変化にせよ、主な種の変化は生息環境の変化を表すものとみるべきではないか。また、東部海域全体でのデータしか考察されていないが、和白干潟の部分だけをとってみたらどのような変化がみられるのか。和白干潟に多数みられるコメツキガニが主な種として出ていないのは和白干潟の実態を十分反映していないように思われるが。

 p3-6-25「湿重量は、干潟北側のH-6で平成6年度以降、植食者が増加しているが、全湿重量には経年的な変化はみられない。湿重量の構成比率は、干潟北側のH-4〜6で平成7年度以降、植食者が増加している。
 当該干潟域では、餌を有機懸濁物に依存している表在性堆積物食者や懸濁物食者、干潟上の藻類に依存した植食者が多い。経年的に干潟北側で平成6年度以降、植食者の湿重量またはその構成比率が増加していることから、餌環境が変化していたと考えられる」。
 p3-6-28「経年的に植食者の湿重量またはその構成比率が増加しているのは、平成6年度以降、干潟北側では藻類の増加など底泥表面の有機物が増加したことを示している。
 干潟北側における底泥の有機物は、H-6では平成7年8月に一時的に高い値を示したのち、減少し、その後平成9年1月以降増加がみられる。この変化は、粘土・シルト分の傾向とほぼ一致していることから、海域の静穏化に伴い、有機物が堆積しやすくなったと考えられる」。
 「和白地区(和白干潟)の砂浜・干潟生物の生息場は、干潟北側で、植食者が増加しやすい餌環境への変化がみられた。また、干潟北側の底質については、1地点で有機物や粘土・シルト分の変化がみられた。この変化要因は、護岸の概成に伴う海域の静穏化により有機懸濁物が堆積しやすくなり、植食者の餌となる藻類が増加したことが考えられる。
 このように、和白地区(和白干潟)では、事業の実施に伴いベントスの生息場機能に変化が生じ植食者の構成比率が増加したと考えられるが、種数、個体数、全湿重量、主な種の構成に影響を及ぼすほどの変化ではなかった」。

 p4-5-11「干潟の一部においては、餌環境について有機物及び海藻類・付着藻類が増加するため、生息場機能が変化し、底泥の有機物を餌とする内在性堆積物食者や干潟表面の藻類や有機物を餌とする植食者の割合が増加すると予測される。
 しかし、生息場機能の変化は干潟の一部に限られること、粒度組成や硫化物などの生息環境の変化が小さく、幼生プランクトンの生息環境の変化はほとんどないことから、砂浜・干潟生物の生息状況の変化は小さいと予測される」。

☆「幼生プランクトンの生息環境の変化はほとんどない」とどうして言い切れるのか。p6-1-5では「砂浜・干潟生物のうちプランクトン態の幼生期を持つものでは、埋立地の存在に伴い生息状況に変化が生じる可能性が否定できない」と書いているが、矛盾しないか。

●鳥類

 まとめの図がp3-6-116、資3-7-76〜80にある。

○シギ・チドリ類

 p3-5-47:埋立周辺地区(海の中道地区、和白地区、香椎地区、名島・城浜地区、多々良川地区、アイランドシティ地区)では「平成7年度以降は個体数が減少したのち横這いで推移している」。「主な種は、・・・埋立地周辺地区において秋から春の優占種となるハマシギは、平成7年度に個体数が減少したのち横這いで推移している」。「この理由は、・・・既存干潟域の生息場機能に変化がないことから、工事や埋立地の存在以外の要因によると考えられる」。
 p3-5-50「個体数は、・・・香椎地区では平成7年度以降、多々良川地区では平成6年度以降減少傾向がみられ、和白地区では横這い、アイランドシティ地区では平成7年度以降増加傾向がみられる」。「各地区で種数及び個体数の変化が生じた原因は、・・・既存干潟域の生息場機能が低下したためではなく、香椎パークポート内の生息場が消失し、アイランドシティ内に新たな生息場が出現したためであると考えられる」。
 当初アセスでは「工事中については、工事区域と主要な生息域が離れており、水質及び底質の影響による餌生物への影響も小さいことから、シギ・チドリ類の生息状況への影響は小さいものと予測評価していた」。「埋立地の存在時については、生息域の減少がないこと、餌生物の生息状況の変化がほとんどないことから、シギ・チドリ類の生息状況への影響はほとんどないものと予測評価していた」。
 「事後調査結果によると、
 ・干潟域の消滅及び改変がないこと。
 ・餌生物量に大きな変化がないと考えられること(第3章第6節3(3)「鳥類の生息場機能」参照)。
 ・埋立周辺地区の種数、主な種の出現状況に変化がみられないこと。
 ・個体数減少の理由は、既存の干潟域の生息場機能に変化がみられないことから、工事や埋立地の存在以外の要因によると考えられること。
 ・分布の変化は、既存の干潟域の生息場機能が低下したためではなく、埋立地区内の状況の変化による一時的なものと考えられること。
 以上のことから、シギ・チドリ類の生息基盤に対する事業の影響は、ほぼ当初予測で想定した状況にあったと考えられる」。

☆水質・底質・底生生物のところでは事業による影響が確認されている。シギ・チドリ類の個体数の減少がその影響と関係ないとどうして言えるのか。
 個体数減少に関する「工事や埋立地の存在以外の要因」として考えられる具体的な事実はあるのか。
 既存干潟域の生息場機能しか問題にしていないが、シギ・チドリ類は既存干潟域以外の場所をも生息場として利用してきたのだから、そのことも問題にすべきではないか。たとえ「既存の干潟域の生息場機能に変化がみられない」としても、だからといって埋立周辺区域全体の生息場機能に変化がないとは言えないのではないか。

 p3-6-45「和白地区では、冬の越冬数は横這いであるが、渡りの時期である春、秋の個体数が平成8年度以降に減少している」。
 p3-6-47「春、秋については、採餌域が香椎パークポートからアイランドシティ内へ変化するにつれ、和白干潟における採餌域及び採餌個体密度が小さくなる傾向がみられる」(資料編参照)。
 p3-6-53:チドリ類の餌生物量は「経年的には、和白干潟南側のH-9高潮帯で春、秋のゴカイ類の減少、H-9中潮帯で春、秋のゴカイ類及びヨコエビ類の減少、御島南側のH-13で春、秋のゴカイ類及びヨコエビ類の減少に伴う餌生物量の減少がそれぞれみられる」。
 p3-6-54:小形シギ類の餌生物量は「経年的には、H-9中潮帯で春、秋に、H-13で春、秋にゴカイ類及び二枚貝類の減少に伴う餌生物量の減少がそれぞれみられる」。
 大型シギ類の餌生物量は「経年的には、御島南側のH-12で秋から春の餌生物量が、H-13で春、秋の餌生物量がそれぞれ減少している」。
 「以上のような、餌生物量の減少がみられる範囲は、シロチドリ、ハマシギについては採餌域におけるごく一部であり、餌生物供給量に大きな変化はないと考えられる。
 一方、大型シギ類については、採餌域がチドリ類及び小形シギ類より狭いこと、大型シギ類のうち個体数が多いチュウシャクシギは、餌生物量が減少したH-13付近のような岩礁が存在する干潟に採餌域がみられることから、餌生物供給量の減少に伴う採餌場機能の低下が考えられる」。
 p3-6-59「干潟域については、チドリ類、小形シギ類は、事業による干潟域の直接的改変はなく採餌場面積の変化はない。また、餌生物供給量にも大きな変化はない。したがって、チドリ類、小形シギ類の採餌場機能の変化はほとんどないと考えられる。
 また、大型シギ類は、採餌場面積の変化はないが、御島の干潟の一部で餌生物供給量の減少による採餌場機能の低下が考えられる。
 アイランドシティ内については、主にシロチドリ、ハマシギの採餌場機能を有する。・・・工事の進捗に伴って採餌場面積は変化しており、採餌場機能も変化していると思われる。
 香椎パークポートについては、平成5〜7年度に主にチドリ類、小形シギ類の採餌場として利用されていたが、工事の進捗に伴って採餌はみられなくなった」。
 p3-6-60「平成5〜7年度は香椎パークポートに休息域がみられ、平成8年度以降は香椎パークポートからアイランドシティ内への休息域が変化している。また、汚濁防止膜等も休息域としての利用がみられる。また、埋立地周辺の沿岸部や農耕地等の陸域は、平成5〜10年度とも休息域としての利用は少ない」。
 p3-6-65「陸域、干潟域については事業による直接的改変はなく、チドリ類、小形シギ類、大型シギ類ともに休息場機能にはほとんど変化はないと考えられる」。
 まとめ「干潟域では、御島の干潟域の一部で、餌生物供給量の減少に伴う大型シギ類の採餌場機能低下が考えられるがほかは、採餌場機能、休息場機能、営巣場機能ともほとんど変化がないことから、シギ・チドリ類の生息場機能に大きな変化はないと考えられる。
 埋立地では、香椎パークポートで採餌及び休息がみられなくなり、新たに出現したアイランドシティ内でみられるようになった。
 以上より、埋立地周辺のシギ・チドリ類の生息場機能は、工事の進捗に伴う埋立地内の環境変化により変化していると考えられる」。

 p4-5-22「工事着工前と比較すると、埋立地の存在による既存干潟域における生息場機能の変化は小さいことから、埋立地の存在によるシギ・チドリ類の生息場機能への影響は小さいと予測される」。
 p4-5-23「竣功によるアイランドシティ地区内の生息場機能の消失に伴い、埋立地周辺全体の生息場機能は工事着工前よりも低下すると予測される」。

☆ということは、埋立地周辺で更にシギ・チドリ類の個体数減少が予測されるのではないか。生態系予測p4-5-44では、生息状況への影響は「比較的小さい」と予測している。

 p4-5-24「埋立地内の都市活動についてみると、シギ・チドリ類の採餌場、休息場、営巣場は埋立地から離れていることから、干渉距離は確保されており、利用可能面積への影響はほとんどないと予測される」。

○カモメ・アジサシ類

 p4-5-27「干潟及び浅海域については、カモメ・アジサシ類の生息場機能の変化は小さいと予測される」。
 アイランドシティ地区では「工事中に一時的にみられた休息場機能、コアジサシの営巣場機能が竣功に伴い消失し、工事着工前の状態に戻る」。
 p4-5-28「埋立地周辺全体の生息場機能は工事着工前よりも低下すると予測される。しかし、既存の営巣場である西戸崎の砂浜域などに改変がないことから、コアジサシの営巣場機能は香椎パークポート内が営巣場として利用されるようになった時期以前(平成4年以前)とほぼ同様の状況になると予測される」。

○海ガモ類

 p3-5-57埋立周辺地区では「個体数は、・・・平成9年度以降、越冬数の緩やかな減少傾向がみられる」。「埋立周辺地区の優占種であるスズガモは、平成9年度以降、越冬数の緩やかな減少傾向がみられる」。「この理由は、・・・事業の進捗に伴う生息場機能の低下によると考えられる」。
 p3-5-60「工事着工後は、・・・和白地区及び香椎地区では平成8年度以降、アイランドシティ地区では平成9年度以降減少傾向がみられる」。「各地区で個体数の変化が生じた原因は、・・・事業の進捗に伴う浅海域の一部消滅により、生息場機能が低下したためであると考えられる」。
 当初アセスでは「工事中については、作業機械の稼動及び作業船の航行による影響は一時的であり、また、水質及び底質の影響による餌生物への影響も小さいことから、影響は小さいものと予測評価していた」。「埋立地の存在時については、海ガモ類の生息域の減少及び底生生物の生息域の一部消滅により分布状況及び個体数が多少変化するものと考えられるが、主要な生息域を保全すること、餌生物の生息状況の変化は小さいことから、影響は比較的小さいものと予測評価していた」。
 「事業の進捗に伴う海ガモ類の生息状況への影響は、当初予測とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

☆海ガモ類の「主要な生息域」とはどこか。現在人工島を建設している場所が「主要な生息域」ではなかったか。

 p3-6-103「海ガモ類の主要な生息域である浅海域については、工事の進捗に伴って一部が消滅し、一部の地点で餌生物量の低下がみられることから、採餌場機能、休息場機能とも低下していると考えられる。
 スズガモは、和白海域の個体数、分布範囲、分布密度のいずれも低下していることから、和白海域における生息場機能が低下していると考えられる。
 ホシハジロは和白海域における個体数に変化がなく、沿岸部での個体密度か高いことから、埋立地の存在によって和白海域の沿岸近くに集中しやすくなったと考えられる。
 また、海ガモ類全種、スズガモ、ホシハジロとも、和白海域から海の中道海域に分布が変化する傾向がみられている。
 アイランドシティ内では、採餌及び休息がみられるようになった。
 以上より、埋立地周辺における海ガモ類の生息場機能は、工事の進捗に伴う浅海域の消滅に伴って低下しているため、個体数が減少するとともに、和白海域から海の中道海域へ分布が移動し、生息域が拡大していると考えられる」。

☆「生息域が拡大している」とはどういうことか。どこからどう拡大したのか。

 p4-5-30「今後は浅海域の一部が消滅する海の中道海域において採餌可能面積及び休息可能面積の減少が考えられるが、その変化の程度は小さいと予測される」。
 p4-5-31「浅海域については、ホシハジロの生息場機能は平成10年度と大きな変化はないが、スズガモの生息場機能は平成10年度以降低下し、海ガモ類全体の生息場機能も低下すると予測される」。
 「工事着工前と比較すると、埋立地の存在に伴う浅海域の一部消滅により、海ガモ類の生息場機能は低下すると予測される。しかし、採餌及ぶ休息可能面積の7割程度が維持されること、残存海域の餌生物供給量の変化は工事着工前と比較して小さいと予測されることから、埋立地の存在に伴う海ガモ類の生息状況への影響は比較的小さいと予測される」。

○カイツブリ類

 p3-5-72:埋立周辺地区では「個体数は、工事着工前が3〜約900羽、工事着工後が0〜約390羽となっており、経年的に大きな変化はみられない」。
 p3-5-75「工事着工後は、・・・和白地区及び香椎地区で減少傾向がみられる」。
 「事業の進捗に伴うカイツブリ類の生息状況への影響は、当初予測(影響は小さい)とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

☆工事着工後、最大羽数で約57%も減ったにもかかわらず、「影響は小さい」とはどういうことか。表現がおかしくないか。

 p3-6-108「カイツブリ類の主要な生息域である浅海域については、工事の進捗に伴ってその一部が消滅し、分布に変化がみられるが、餌生物供給量にほとんど変化がないこと、個体数に大きな変化がみられないことから、採餌場機能、休息場機能の変化は小さいと考えられる。
 なお、カイツブリ類の分布域は和白海域から海の中道地区へ移動し、生息域が拡大している。
 アイランドシティ内では、採餌及び休息場がみられるようになった。
 以上より、埋立地周辺におけるカイツブリ類の生息場機能の変化は小さいと考えられる」。

 p4-5-32「工事着工前と比較すると、埋立地の存在による浅海域の生息場機能の変化は小さいことから、埋立地の存在に伴うカイツブリ類の生息場機能への影響は小さいと予測される」。

○貴重種

 p3-5-82、4-6-17の表(埋立地周辺地区における主な貴重種)。

☆カラフトアオアシシギの記載がない。

 p3-5-102:当初アセスでは「工事中については、工事区域及びその近傍に生息しているカンムリカイツブリ、ツクシガモなどについては作業機械及び作業船の航行による影響は、一時的であり、影響範囲は工事区域近傍に限られること、その他の貴重種については工事区域と主要な生息域が離れていること、水質及び底質の影響による餌生物への影響も小さいことから、貴重種の生息状況への影響は小さいものと予測評価していた」。「埋立地の存在時については、カンムリカイツブリについては分布状況及び個体数が多少変化するが主要な生息域が保全されることから、影響は小さいと予測評価していた。その他の貴重種については、生息域の消滅、改変がなく、生息域が埋立計画地から離れていること、餌生物の生息状況の変化がほとんどないことから、貴重種の生息状況への影響はほとんどないものと予測評価していた」。
 「事業の進捗に伴う貴重類の生息状況への影響は、一部の種で個体数の増減があるが、当初予測とほぼ同様の状況であったと考えられる」。

 p4-5-36「工事中のアイランドシティ地区内はヘラサギ、クロツラヘラサギの「ねぐら(夜間の休息場)」としても機能しており、埋立地内に一時的に出現した生息場機能の消滅に伴い、埋立地周辺におけるヘラサギ、クロツラヘラサギの生息場機能は大幅に低下すると予測される。
 しかし、既存の生息場には改変がないこと、工事着工前のヘラサギ、クロツラヘラサギの主な生息場は西区の今津干潟であったことから、生息場機能は工事着工前とほぼ同様の状況になると予測される」。

 p4-5-38「事後調査結果によると、干潟域におけるツクシガモの利用は少なく、ツクシガモの生息場機能は埋立地の環境に大きく依存しているため、工事中の埋立地内に一時的に出現した採餌場、休息場の消滅に伴い、埋立地周辺におけるツクシガモの生息場機能は工事着工前と同程度まで低下すると予測される」。

 p4-5-42:人工島では「ハヤブサの利用は確認されていないことから、その利用頻度は低いと考えられ、アイランドシティ地区の竣功に伴う生息場機能の変化はほとんどないと予測される」。

☆平成12、13年度は、ハヤブサは採餌のため人工島を結構利用している。

●生態系予測

 p4-5-44「埋立地の存在に伴う生物の生息場機能の変化は図4-5-8に示すとおりであり、いずれも生物の生息状況に大きな変化を及ぼすものではないと予測される」。
 「埋立地の存在による海域の静穏化により、ベントスの生息基盤である水底質が変化し、和白、御島の海域及び干潟域のベントス生息場機能が変化すると予測されるが、底生生物及ぶ砂浜・干潟生物の生息状況に大きな変化はないものと予測され、これらを餌とする魚類及び鳥類の餌環境に影響を及ぼす程の変化ではないと予測される」。
 「埋立地の存在に伴う生息場面積の減少により、海ガモ類の生息場機能が低下し、海ガモ類の生息状況に影響が生じるが、その影響は比較的小さいと予測される。それ以外の鳥類については、埋立地の存在に伴う生息場機能及び生息状況の変化は小さいと予測される」。
 「なお、シギ・チドリ類については埋立地の存在に伴う生息場機能の変化は小さいが、埋立地の存在以外の要因(香椎パークポートや貯木場における生息場の消滅)による生息場面積の減少により、生息場機能が低下し、生息状況に影響が生じると予測される。しかし、その程度は比較的小さいと予測される」。

●結論

 p5-1-1「事後調査結果及び予測結果より、当初アセスで設定していた環境保全対策を確実に実施していくことで、今後とも埋立地周辺の環境保全は図られるものと考えられる」。
 当初アセスで設定していた環境保全対策とは、p1-3-1〜2によると、工事中の大気汚染防止対策、騒音防止対策、振動防止対策、水質汚濁防止対策、埋立地利用に伴う大気汚染等の対策、親水性護岸、野鳥公園、エコパークゾーン、景観形成ガイドラインなどである。

☆この結論が正しいなら、和白海域を中心とした人工島周辺海域における底質改善対策(生物による浄化)など必要ないのではないか。このような対策が必要だということは、当初の対策だけでは不十分だということではないのか。

●今後の環境保全と創造

 p6-1-3「和白海域を中心としたアイランドシティ周辺海域においては、底質改善対策として、当該海域の底質環境に適合した生物による浄化を活用した手法の調査・研究を進めている。将来的には、本検討で得られた手法による底質改善対策の導入を検討していく」。
 「アイランドシティ内に整備する野鳥公園については、埋立地周辺に飛来する鳥類の特性を踏まえ、鳥類生息環境の創造に重点をおいた整備を行うこととする。今後、野鳥公園の具体的な整備内容については、学識経験者等の指導を受けながら検討していく」。
 「また、エコパークゾーンについては、人の利用と鳥類の生息環境の保全との共存が図られるよう、利用時間、利用方法、利用範囲等について適正な誘導を図る方策を検討する」。

☆鳥類の生息環境を守るため、人工島周辺のプレジャーボートの規制をすべき。
 毎年異常発生し、和白干潟に悪影響を及ぼしているアナアオサに対する対策はとらないのか。

●今後の環境監視

 p6-1-4「底質については、和白海域、御島海域、埋立地北西海域、和白干潟地区、御島地区において埋立地の存在ないし工事が主な要因と考えられる硫化物の増加等が考えられ、また、このうちの一部においては平成9年度以降、硫化物等の季節変化が冬高く夏低い傾向に逆転している。また、これらの地域では埋立地の存在により堆積傾向が強まる区域及び地形変化が弱まる区域が予測されており、この変化による底質変化が生じる可能性がある。したがって、これらの地域における粒度組成、硫化物などの動向に注意を払っていくことが必要であると考えられる」。

 p6-1-5「地形については、埋立地の存在により埋立地北側の水路部で堆積傾向が強まり、和白海域、和白干潟部で、地形変化が弱まると予測されたことから、海底面・地盤高の変化の動向に注意を払っていくことが必要であると考えられる。
 また、これらの変化により、底質、水質、底生生物の生息状況等に変化が生じる可能性があることから、これらの動向にも注意を払っていくことが必要であると考えられる。
 植物については、海岸部(汀線よりも陸側部分)で埋立地の存在に伴う漂砂の変化による地盤高の変化、及びそれに伴う生育状況の変化が生じる可能性があることから、雁の巣砂嘴及び和白浜で海浜・塩沼地植物の生育状況の動向に注意を払っていくことが必要であると考えられる。
 底生生物及び砂浜・干潟生物については、埋立地北西海域、和白海域及ぶ和白干潟域で、埋立地の存在に伴う底質の化学的酸素要求量(CODsed)、硫化物の増加及び底泥直上の夏季のおける貧酸素の進行等による生息場機能、生息状況の変化が予測されること、砂浜・干潟生物のうちプランクトン態の幼生期を持つものでは、埋立地の存在に伴い生息状況に変化が生じる可能性が否定できないことから、底生生物、砂浜・干潟生物の生息状況、生息環境の動向に注意を払っていくことが必要であると考えられる。
 鳥類については、埋立地の存在ないしは他の事業により、生息場機能が低下し生息状況が変化すると予測されるシギ・チドリ類、海ガモ類、カイツブリ類及びコアジサシについて、今後とも分布域、個体数などの生息状況及び餌生物の状況などの動向に注意を払っていく必要があると考えられる」。

(以上、未定稿)



戻る 2001.8.25作成 2001.8.27最終更新 和白干潟を守る会